☆☆☆☆☆☆ 関野吉晴 × 水本博之(監督)× 纐纈あや(映画監督) ☆☆☆☆☆☆








関野
 纐纈さんは今回ご覧になるのは2度目とのことですが、この映画の印象は?






纐纈
 血の騒ぐ映画だなって。
 グレートジャーニーの大ファンで。私も友人と2人、自転車で北海道を12日間くらいで回ったことがあって。
 この映画を見ることで、私の中に眠っているものを思い出せそうで、わくわくしました。

 でも私たちは目的地に着くことを最優先して旅の距離を短くしようと思うんですけど、この旅も映画もゴールにつく事が目的ではなかった。



関野
 でも、みんなラストはあんな地味だと思っていなかったんですよ。
 次郎なんかは胴上げされるはずだったって(笑)

 実際は税関に色々尋問されたり。検疫でね、虫とかつれてきてるんじゃないかって(笑)



纐纈
 でも、自然の流れを捉え、時間を凝縮し、映像にするというのはとてつもなく大変でしょう。?海を撮れば海になる訳ではないですもんね。






水本
 そうですね。
 海をそのまま撮って見せても実感は伝わらないんです。その都度、海の見せ方には変化を付けています。
 例えば、台湾から石垣島演出ではカメラのブレを意図的に多用したり。



纐纈
 映画を見ていて、その人がその人だと分かる様に工夫されているなと感じました。



水本
 最初の頃、他の人に映画の試作品を見せたときにインドネシア人の顔が区別できないと言われて。僕らは判るんだけど、日本の普通の人には判らない。だから、それぞれをキャラ付けしていったんです。といってもキャラクターを作った訳ではなくて、もともと皆そういうキャラなんですが覚えやすいように提示していきました。






纐纈
 また質問なのですが、船の上だと無防備にリラックスできないのではないですか?    



関野
 いや、僕はぼーっとしてるのが好きなので(笑)
 リラックスする時はリラックスしてましたよ。だらけているんだけど、でもやっぱり、皆カヌーと自然と人間との関係を五感で感じてる。風は触感だし、匂いは撮れないし。

 映画では、それを伝えないといけないんですよね。



纐纈
 映像が伝えられるのは視覚と聴覚ですもんね。






纐纈
 今は短期間で評価される世の中で、十年後に十年後に良くなればいいという考え方が今は許されないんですよね。でもこの映画はそうではなくて7年かけて作られている。なかなかできない体験ですよね。



水本
 そうですね。貴重な体験です。

 時間もかかったし貧乏もしていますが、今ある条件をどう楽しむかだとは思います。
 金のない事は仕方のない事だし、悩んで停滞するよりは今できる事で面白い物を見つけた方がいいと僕は思いますね。






〔記事:岡田真由子〕





対談者プロフィール

纐纈あや
1974年、東京生まれ。自由学園卒業。
2001年ポレポレタイムス社に入社。本橋成一監督の『アレクセイと泉』(‘02年)『ナミイと唄えば』(’06年)の映画製作に携わる。’10年に上関原子力発電所に反対し続ける島民の暮らしを映し撮った映画『祝の島』を初監督。シチリア環境映像祭で最優秀賞受賞。二作目『ある精肉店のはなし』(2014年)は釜山国際映画祭、山形国際映画祭招待作品。文化庁映画賞文化記録映画大賞、ニッポンコネクション(フランクフルト)ニッポン・ヴィジョンズ観客賞、第5回辻静雄食文化賞。