☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 関野吉晴 × 田口ランディ(作家) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆








関野
 みなさん、こんばんは。今日のゲストは作家の田口ランディさんです。
何回か対談したことあるんですが、初めてお会いした時にアウトドア派だと知って驚きました。






田口
 そうですね、昔ヨットをやっていたので。



関野
 今日は前から話していたキーワード、「全力でやる」をテーマに話したい思います。



田口
 いきなりですか?(笑)

 今日映画を見た方達は「関野さんってどんな人?」って知りたいと思うんですよ。
 冒険する人は関野さんタイプ多いですよね。痩せてて、肩の力抜けてて、一見ハードなことはやるように見えないっていう人が、さらっとこういう大冒険をされることが多いですよね。



関野
 だいたい初めて会った人には、もっと大きい人で、よくクマみたいな人だと思ってたと言われます。






田口
 冒険したいと思われたのは高校生の頃ですか?



関野
 当時は海外渡航は自由化になったばかりで、大学に入って探検部をつくりました。それで好きなことをするために親の仕送りを断ったんですよ。

 アルバイトはなんでもやりました、団地の中の集会所を借りて塾を開きました。でも学年がバラバラな子がたくさん集まってしまい、友達を雇って赤字になりました。(笑)



田口
 まあ、すごい。大学は卒業できたんですか?



関野
 最初は法学部に入りました。法学部はコツコツやればできると思ったんです。でも、全然やる気はなかった。僕はどこかに行きたかっただけで…。

 法学部は7年です。その間、2回アマゾンに行って医者になろうと決意しました。大学を卒業するときに「ずっと冒険を続けたい」と思ったんです。
 それには研究者になるか、ジャーナリストになるか、写真家になるか、いろいろあるんですけど、調査とか取材では行きたくない。旅先の相手と友達になりたいと思ったんです。家族みたいになりたいと。医者になれば、なんかできるかもしれない。また、食べていけるだろうと。

 それで必死に勉強して、医学部に入り直して、14年間学生してました。



田口
 うわー、いつ働いているんですか?



関野
 集中的に働いて…アマゾンでもヘッドライトで勉強してました。帰国したすぐ試験だったので。






田口
 集中力があるんですねえ。普段はエネルギーを貯めて、ここぞという時に全力投球するんですね。

 この映画や関野さんのこれまでの冒険から感じることは、いつも「全力投球」ということです。
 関野さんを見ていると、私はいつも「あー、怠けているなあじぶん」と感じる。一生懸命生きているつもりなんですけど、でも日本の社会はサービス化が進んでいて、他人にやってもらうことが便利だと思い込んでいる。私の代わりにいろいろなことをやってくれる人がたくさんいて、結果として、怠けていることが多いです。
 人間って成長するときは全力出し切ったときなんですよね。120パーセント出し切ったときに何かを学ぶことができる。100できる人が80しかやらないと成長がとまってしまう。

 80で止まってしまう。それが今の日本なんだなあと感じる。  



関野
 ただ、僕は「頑張ってね」という言葉が好きじゃない。
 例えば、うつの人やガンの末期の人は頑張っているんですよ、思っ切り。頑張っているのに、頑張ってね、というとへし折れてしまう。全力で休みなよ、と緩急が大切だと思う。



田口
 関野さんの冒険を通して感じることは、今やるべきことを、きっちりと積み上げていけば、必ず進めるんだよ、ということ。決して後戻りしているわけじゃないんだよ、と励ましてもらっている気持ちになります。

 最近、暗いニュースが多けれど、どの民族も積み重ねた歴史の中で成長しているんだから、心配しなくていいんだ、というメッセージを、今回も受け取りました。とっても元気が出る映画を、ありがとうございます。






〔記事:野中裕樹〕





対談者プロフィール

田口ランディ
2000年6月長編小説「コンセント」を出版。作家生活に入る。
その後「アンテナ」「モザイク」(共に幻冬舎)を発表。広く人間の心を題材にした作品を発表する。「富士山」「ドリームタイム」(文藝春秋)「ひかりのメリーゴーラウンド」(理論社) 「キュア」(朝日新聞出版)原爆をテーマにした短編集「被爆のマリア」がこの夏、文春文庫に! 最新刊は娘たちへのメッセージ「クレンズの魔法」(海竜社)「生き直すにはもってこいの日」(バジリコ)
ノンフィクションでは「忘れないよヴェトナム」「ひかりのあめふる島屋久島」「もう消費すら快楽ではない彼女へ」(いずれも幻冬舎)「ハーモニーの幸せ」「水の巡礼」(共に角川文庫)「オカルト」「神様はいますか?」「根をもつこと翼をもつこと」(いずれも新潮文庫)「寄る辺なき時代の希望」(春秋社)な生きる意味を教えてください」(バジリコ)